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EU視察における温熱環境考察|前編

過日、EUへ温熱環境を本気で考える機会を頂きました。

日本で活躍されるドイツ人の女性建築家である「彦根アンドレア」さんと共に。

少し前の僕であれば、それこそまるで興味を示さなかったでしょう。

昨今、建築の温熱環境や環境保全における企業や個々の活動が目にとまるようになりました。

しかしなんとなく、各々の利潤のための活動としか目に映らず、その真意が見えなかったのが本音。

「やらない善よりやる偽善」とは申しますが、そこにはしっかりと目的意識を持った着地点が欲しかった。

そんな折、同業で同志でもある「もるくす建築社」の佐藤氏からこのツアーに誘われました。

彼は温熱に対しての知識や意識が大変に博学で明確で的確。

断熱材はどうだの、換気はああだの、C値はQ値はいくつだののみの、形式や数値に捕らわれるのではなく、きちんと筋の通った温熱環境を構築する辺りに共感を覚えたのです。

いままでも相談に載って頂いていたけれども、やはり自分の足で見て、感じ、考える時間がとても大切だと思うのです。

そんなタイミングでこのツアーですから、きっと何かの思し召し。

断る理由もなく参加表明し、楽しみにこの日を迎えました。

 

期間は9/17~9/30の2週間と長期に渡って視察。

フィンランドに始まり、スイス、フランス、ドイツにオーストリアと、5カ国を巡業。

現地の建築家作品を見学はもちろんの事、エネルギー問題における視察。

建築家はアルヴァ・アアルト、ザハ・ハディド、安藤忠雄、ル・コルビュジェ、レンゾ・ピアノ、ズントー、カウフマンなどなど。

環境問題については、環境ジャーナリストである「村上敦」さんを迎え、現地の環境問題における取り組み、再生可能エネルギー、地域暖房、脱原発とその先へ。

更には現地建築家との交流もあり、ドイツの住宅供給事情についても学びました。

 

環境問題は異国の出来事などではなく、地球での出来事。

地域性はもちろんあるけれど、各々の国における事情もあるけれど、今そこに迫る危機は同じ地球規模。

それがたまたま温熱先進国であるドイツで学んできただけの事。

ドイツが偉いのではなく、もはや当たり前の世界観にも思えるほどの衝撃を受けて参りました。

技術面や細かい数字は正直理解し得ない範ちゅうではありますが、危機感は確実に覚えます。

きっとそれが大切で、理屈はいずれにせよ「まずは出来る人が出来る事からやる」が大事。

そして僕がそうであったように共感を呼び、活動が広まっていくのだと思うのです。

僕にとっての結果が建築における温熱環境へと昇華され、今後の建築人生における多大な影響を受けていく事でしょう。

まだまだデザインも住環境も勉強の身ではあるけれど、またひとつ、温熱環境という課題を課せられた気がします。

けれどそれは決して面倒なことではなく、喜んで、前向きに取り組みたいと素直に思える自分がいる。

それは結果的に住まい手の利益に繋がり、心地よい住環境へと結びつくから、僕は素直に受け入れました。

断熱材、気密、換気に挙げられる性能はもちろんの事、日本固有の“環境と共生”したデザインとは何か。

「閉じれば性能の開けた心地良さを」模索して参ります。

まずはやる事から始まり、試行錯誤を繰り返しながら、これからの、僕なりの温熱環境における最適解を模索する日々が始まります。

とはいえ、今までも温熱性能においてお叱りを受けた事はないのですけれどね(笑)

 

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、ここからは日ごとに写真を用いてEUをご紹介して参りましょう。

 

まずは、フィンランドはヘルシンキ。

成田空港から10時間程度のフライト。

気温的にはひと月早い10月の日本程で、日中は温かく過ごしやすかったです。

文献では味わえない空気感ですから、実際の肌で、その目で感じる建築は生々しく感じます。

「なぜこの建築が生まれたのか」

その地域性や気候が生み出し、そこで育った建築家だからこそのカタチなのだと思います。

だから日本でそれをそのまま輸入しても、絶対に日本では成立しないし、生かせない。

表面的な要素だけではなく、その辺りを読み込む事を重点に現地へ入りました。

ヘルシンキの町並。

ザ・ヨーロッパの装いです。

ヘンシンキ駅。

架構が美しく、印象的でした。

早朝の町並。

基本的に道路は石畳。

キャリーバッグを転がすのも一苦労(笑)

アパートメント。

こちらの集合住宅の建築で特徴的なのはテラス。

日本のようなオープンエアではなく、ガラス等で囲われているのが特徴です。

後にも書きますけれども、自然との接し方が文化の違い。

こちらでの自然との接し方は“制圧”、日本では“共生”と考えます。

北欧はとにかく内を囲って内部と外部を切り離す。

日本では開くと閉じるを繰り返す。

この差はとても大きく、だからこそ互いの建築は成立しているのだと思います。

アアルト建築第一号。

そしてアアルトカフェ。

ふんだんにゴールデンベルが吊られています。

天窓はアアルト建築の特徴のひとつ。

真鍮の造作も大変美しかったです。

本屋さんではあるけれど、圧迫感が軽減され、人の居場所として、居心地がとてもうまく設計されている印象でした。

続いては石の教会と呼ばれる「テンペリアウキオ教会」。

紫のライトアップがとても残念…余計な事しなくても美しいのに…

自然に倣うとはこのことかと。

外はこんな感じ。

ご覧のように、岩をくりぬいて教会を建立したのでした。

アアルトのスタジオ。

水平ラインの連続窓が目を引きます。

写真では判りづらいですが、ただの白い外壁かと思いきや、木や石や煉瓦、そしてその張り方もバラバラ。

それらを白一色で統一感を出すけれども、素材感を感じさせる手法。

自然光が降り注ぐ、心地の良さそうなオフィス。

もちろんそれを念頭に置いた設計である事は言うまでもなく。

この白の比率がとても好き!!

ギャラリー。

先程の連続窓の部屋となります。

窓をRに曲げるのではなく、それに倣ってしまう事を良しとするおおらかなアアルト。

会議室?

こちらでも積極的に自然光を取り入れているのが垣間見えます。

さすがはアアルトらしい、コンパクトでまとまりのあるキッチン。

随所にディテールが散りばめられ、大変参考になります。

そしてなんといっても家具や照明器具のデザインです。

次いでアアルト自邸。

当時よりも気候変動が激しく、当時はこの納まりでも大丈夫だったようなのですが、異常気象により気候に対応しきれなくなってきたとか。

最近巷でよくこの軒ゼロ建築を見受けられますが、きちんとその本質を理解しないと、住まい手に多大な不利益を被ります。。。

名建築のカタチには、見た目だけではない必然性があるのです。

書斎。

吹抜の奥のコーナー窓で、天井は低く、それだけで絶対的な心地よさを感じます(笑)

ゲストルーム。

この細部の作り込みがまたアアルト。

ベッドは一段高くなっているのですが、これは階段の懐を確保するため。

ダイニング。

自然の取り込み方と換気における窓の誂え方が良い。

リビング。

パート毎における部屋の区切り方はまさか欧州式なのだけれども、なんとなくの空気で繋がっているのが絶妙。

リビングの片隅にはグランドピアノ。

アアルトは生涯日本に来た事はなかったけれど、大の日本びいきだったとか。

基本窓ははめ殺し。

2階のリビング。

窓の高さが好き。

アアルト設計の年金会館。

こちらもやはり水平窓がシンボリック。

大理石の床。

タイルはアアルトのオリジナル。

電話ボックスまで設計。

先程の、本屋さんとも通じるものがあるスペース。

ただ天窓を設けるのではなく、それをシンボリックに仕立てるアアルト。

図書室。

下に潜り込ませるこの読書スペースがまた秀逸。

タイルは多色を用いていましたが、色は基本的に自然界から調色されているそう。

食堂。

窓下と天井にはパネルヒーターがセットされる。

配膳スペース。

現在ももちろん使われています。

町散策中に見掛けた道路工事でのヒトコマ。

こちらでは基本的に地域暖房。

一箇所でお湯を作り、地域に分配する仕組み。

アウトバーンを気持ちよくかっ飛ばして(笑)、マイレア邸。

プールのカタチでアアルトの代表的なアレのようにも見えるけども…どうなのでしょ?

ちなみに内観は撮影禁止。

美術品収集家でもあったマイレア。

普通にピカソやロートレックの絵画が鎮座していたのには感動を覚えました。

まるで絵本のようだけれどこれがこちらでは普通に現実。

このように、フィンランドの自然にあり得る色を人工物に用いるのがまた素敵。

だからヨーロッパの町並は整ってキレイなのです。

フィンランド出国前にレイヴィスカの教会。

是非見たかった一品!!

この教会のためだけに設計された照明器具。

昔はその建築のシンボリックとして、家具や照明がいちいちデザインされる事が多かったのです。

 

今回はこの辺で。

次回は中編へと続きます。